フィゾーの光速度実験シミュレーション

初めに

光の速度は約30万km/s。あまりに速すぎて日常では一瞬に思えます。
では人類はどうやってこの速度を測ったのでしょうか?

1849年、フランスの物理学者イポリット・フィゾーは、 回転する歯車を使って地上で初めて光速を測定することに成功しました。
彼の実験は驚くほどシンプルなアイデアに基づいています。

実験装置

フィゾーの実験装置は以下の通りです。光源からの光がハーフミラーで反射し、 回転する歯車の隙間を通って約8.6km先の鏡に向かいます。 鏡で反射した光は再び歯車に戻ってきます。

歯車がゆっくり回転しているとき、光は隙間を通って行き帰りとも通過できます。
しかし回転数を上げていくと、光が往復する間に歯車がちょうど1歯分回転し、 帰ってきた光が歯に遮られて観測者に届かなくなります。
この「初めて光が消える回転数」から光速を計算できるのです。

シミュレーション

歯車の回転と光パルスの往復をアニメーションで確認しましょう。
「光を発射」ボタンを押すと、光パルスが歯車の隙間を通って鏡に向かい、 反射して戻ってきます。

光の移動を見やすくするため、アニメーションはスロー再生しています。
実際には光は往復約17kmをわずか0.00006秒で移動します。
歯車は常に回転しています。歯車の「隙間」のどの位置(開き始めか、閉じかけか)で光を発射するかによって、帰還時に通過できるかどうかが変わります。
しかし、回転速度がちょうど「初めて光が消える条件(暗点)」に達していると、隙間のどこで光を一斉発射しても、戻ってきた時にはすべての光が必ず歯に遮られます。
※遮断/通過の判定および描画は、設定された正確な歯数で処理しています。

光速度の計算

フィゾーの実験では、帰還光が初めて消える条件(最初の暗点)から光速を求めます。

歯車が歯数 \( N \) で回転速度 \( f \)(回転/秒)のとき、歯車が1歯分(歯1つ+隙間1つ) 回転する時間は:

\( t_{\text{tooth}} = \dfrac{1}{2Nf} \)

光が距離 \( d \) を往復する時間は:

\( t_{\text{round}} = \dfrac{2d}{c} \)

最初の暗点条件は、光が往復する間にちょうど歯車が半歯分(隙間→歯)回転することです。 すなわち \( t_{\text{round}} = t_{\text{tooth}} \) より:

\( c = 4dNf \)

距離 d
8.63 km
歯数 N
720
回転速度 f
12.6 rev/s
往復距離 2d
1歯分の時間 1/(2Nf)
算出光速 c = 4dNf
真の光速(現代の定義値)
299,792,458 m/s

あとがき

フィゾーの実験で得られた光速は約 3.13 × 10⁸ m/s で、現代の定義値(299,792,458 m/s)と 比べて約5%の誤差でした。
回転する歯車と鏡だけでこれほど正確に測定できたことは驚異的です。

翌年の1850年にはフーコーが回転鏡法を用いてより正確な値を得ています。
現代では、光速は定義値として固定されており(1983年の国際度量衡総会)、 逆にメートルの定義が光速に基づいています。