固有値計算の相似変換を可視化

1.始めに

本記事では、固有値方程式の行列を相似変換したとき何が起きているのかを可視化します。
なお、以下の記事で説明した内容がベースになっています。

2.相似変換の本質的な意味

相似変換とは、楕円を回転だけさせることです。
突然「楕円」が出てきましたが、この辺りの説明は「M1-1.固有値方程式の可視化(対称行列の場合)」に書いていますのでそちらをご参照ください。

そのため、「相似変換を行って固有値方程式を解く」という作業は、「楕円を回転させて、その楕円と半径1の円の接点を求める問題」と言い換えることができます。

3.相似変換(=回転操作)の可視化

楕円が回転することで円と楕円の接点位置は変化します。
そのため原点から接点を結んだベクトルである固有値ベクトルは変化します。
一方、楕円そのものの大きさや形は変わらないため固有値は変化しません。

4.相似変換で固有値が変わらない理由

まず楕円(または一般二次曲線)を行列表現していきます。以下のように書き換えられます。


$$ ax^2 + by^2 + c x y = \lambda $$

$$ \Downarrow $$

$$ \begin{pmatrix}  x & y \end{pmatrix}  \begin{pmatrix}  a & \frac{c}{2} \\ \frac{c}{2}  & b \end{pmatrix} \begin{pmatrix}    x \\ y \end{pmatrix} = \lambda  $$

ポイントは、行列の左側と右側両方から\(\begin{pmatrix} x \\ y\end{pmatrix}\)とその転置が掛かっていることです。相似変換も左側と右側に変換行列とその転置が掛かっていましたので類似性があります。

次に\(\begin{pmatrix} x \\ y\end{pmatrix}\)は実は別のベクトル\(\begin{pmatrix} x' \\ y'\end{pmatrix}\)が回転したものだった、という式を作ります。

$$  \begin{pmatrix}    x \\ y \end{pmatrix}  =   \begin{pmatrix}  cos(θ) & -sin(θ) \\ sin(θ)  & cos(θ) \end{pmatrix} \begin{pmatrix}    x' \\ y' \end{pmatrix} $$

この式を楕円(または一般二次曲線)の式に代入します。


$$ \begin{pmatrix}  x' & y' \end{pmatrix} \begin{pmatrix}  cos(θ) & sin(θ) \\ -sin(θ)  & cos(θ) \end{pmatrix} \begin{pmatrix}  a & \frac{c}{2} \\ \frac{c}{2}  & b \end{pmatrix}  \begin{pmatrix}  cos(θ) & -sin(θ) \\ sin(θ)  & cos(θ) \end{pmatrix} \begin{pmatrix}    x' \\ y' \end{pmatrix} = \lambda $$


そして左辺に2x2行列が3つありますが、それを1つにまとめて式を見やすくするとこのようになります。


$$ \begin{pmatrix}  x' & y' \end{pmatrix}  \begin{pmatrix}  a' & \frac{c'}{2} \\ \frac{c'}{2}  & b' \end{pmatrix}   \begin{pmatrix}    x' \\ y' \end{pmatrix} = \lambda $$


そしてこの楕円(または一般二次曲線)に対してラグランジュの未定乗数法で半径1の円と接する点を求める式を立てれば、相似変換した行列の固有値方程式が完成します。


ポイント2つあります。

ポイント1.
右辺の\(\lambda\)は回転に対して何の影響も受けていません。この\(\lambda\)はそのまま固有値を表しています。つまり、相似変換によって固有値は変わりません。

ポイント2.
相似変換で回転行列を左側と右側から掛ける理由は、この楕円の回転で考えると必然であることが分かります。

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